イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
「祥太とケリがつかないうちに実莉に手を出したのは悪いと思ってるけど、祥太の浮気には俺だってイライラしてたし。
散々実莉の事傷つけたくせに、振られたくらいで傷ついた顔してる祥太見てたらつい、自業自得のくせに落ちてんじゃねぇってなって。
で、そしたら祥太が殴り返してきたからそこから殴り合いになった」
「え……祥太、殴り返したの?」
あの温厚な祥太が?
そんな風に思って聞き返した私に、風間が笑う。
「あいつの笑った顔みたいに、ヘラヘラした拳だったけどな。
〝言っとくけど、俺の方が好きだったんだからなっ〟って、俺に馬乗りになって怒鳴ってた。
だったら泣かすような事ばっかしてんじゃねぇって殴り返して……そっから数発ずつ殴り合って終わったけど。
殴られてやるつもりだったのに、多分俺の方が手数多かったかもな」
ははって笑ってるけど、さっきから話してる内容は決して笑ってできるような話じゃないと思うのに。
終始風間は楽しそうで、それがなんでなのかよく分からない。
それに……なんで、わざわざ?って、そこも分からない。
「なんでわざわざ祥太に言いにいったりしたの?」
頬の傷を拭きながら聞くと、風間はじっと私を見たまま答えた。
「だっておまえ、祥太からでも言われなきゃ、俺んとこにこないだろ」
傷を拭いていた手がビクってなって止まる。
ドキッとした気持ちを悟られないように焦りながら消毒液をティッシュに落とした。