イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―


意識してみれば、こんな膝突き合わせるような距離感は、あの雨の日以来で。
風間の部屋で、好きなんて言葉にしちゃった時以来で。

向けられる視線に熱がこもっているように思えてしまって、顔が上げられない。
俯いたままでいると、消毒液を持った手を上から握られて、また肩が跳ねた。

「風間……っ、手……」

そっとはがそうとするのに、ギュッと強く握られて戸惑う。

「祥太に遠慮して、全部自分のせいだって溜め込んで、絶対に俺のとこにはこないのなんか分かりきってたし。だから」

俯いたままの私の視線の先に、もう片方の風間の手が伸びてくる。
そして私の手から消毒液を抜き取ると、それを床に置いてから私の手を握り直した。

触れた手から風間の気持ちが伝わってくるみたいで……それが私の身体中にぶつかってドキドキと反響する。

「でも、これで祥太公認だし、殴られた甲斐があった」
「公認……?」

それを聞いて……祥太からのメールを思い出す。
プレゼント送ったからって言葉の後に……〝大事にしろよ〟って書いてあった事を。

信じられない思いでゆっくりと顔を上げると、こっちを真っ直ぐに見つめる瞳と視線が重なる。
いつも憎たらしい色ばかりを浮かべるくせに、今はやたらと優しく見つめてくる瞳に、言葉が詰まった。


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