イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
祥太に、「あの、バイトの女の子がやたらと風間に構ってた店」と言われて、あああれかと思い出す。
二十歳かそこらのバイトの女の子が、風間を気に入ったらしくあからさまに私たちのテーブルばっかり来ていた時の事を。
頼んだ料理をわざわざ小皿に取り分けてくれたり、何度も追加オーダーがないか聞きにきたり、その過剰な接客は他のテーブルから苦情が出るんじゃないかと思うほどだったのだけど。
それにぶち切れたのは、他のお客さんではなく、王様のような扱いを受けていた本人、風間だった。
「いちいちうるせーな、男漁る前に仕事しろよ」と言われた女の子は泣きそうになっちゃったから、逃げるようにお店を後にする事になったのは、確かに二ヶ月近く前。
「え、それから一度も会ってなかったの?」
私はその間に少なくとも五回は会ってるのに?
驚いて聞くと、祥太が頷く。
「だってこいつ、メールも電話も無視するんだもん」
この二ヶ月そんなに仕事が忙しかったのかな、という気持ち半分、祥太の相手するのがそんなに嫌なのかなって気持ち半分に隣を見ると、風間は頬杖をついて無表情のまま答える。
「だっておまえ会うとうるせーんだもん」
バッサリだ。だけど慣れっこの祥太はそれを軽く流す。