イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
いないと気分が沈んでしまうような存在だったんだ。本当に。
例え浮気されて落ち込んでも、顔を見るとやっぱり憎めなくて、仕方ないなって思えてきて、それまで感じていた不満やトゲトゲした気持ちも会っていると泡になって消えていくみたいな、そんな感じだった。
今もそうなのかは……自分でもよく分からない。
多分、長すぎる付き合いが気持ちをぼやかせているんだとは思う。
祥太と私の間には色んな関係がありすぎるから。友達とか弟とか恋人とか。
ぼやけている気持ちをクリアにしたら……そこに何が残るのか――。
「行くと思った」
離れていく祥太の後ろ姿をぼんやりと眺めていると、隣から声をかけられる。
見ると、風間が私を見下ろしていた。
「前はよく行ってたよな、祥太の付添」
「付添って、その言い方じゃまるで私が祥太の保護者みたいじゃない」
「間違ってんのか?」
「……半分くらいはね」
間違ってないと言い切れない事を虚しく思いながら、くるっと反転して歩き出す。
どっぷりと暮れた空には星がいくつも見えていたけれど、もわっとした夏の空気は相変わらずそこにあった。