イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―


「ここ数年は誘われてもついてく事が少なくなったの。
前だったら行ってたのに……気持ちが少し変化したのかもね」

いい方にだか悪い方にだか分からないけど、と呟くと、隣に並んだ風間が答える。

「いい方に、だろ。俺と会った時が最悪な状態だったから、多分あれ以上悪くはならねーから」
「ああ、私もまだ浮気される事に慣れてなかった上に素直に傷ついてたから?
確かにあの頃は最悪だったかもね」

「見てて情緒不安定すぎてイライラしたでしょ」と聞いた私に、風間はしばらく視線をくれてから目を逸らす。

「別に」
「嘘ばっかり。短気な風間がイライラしないわけないじゃない」
「まぁ、イライラはしてた。けど、おまえにじゃなくて祥太にだ」
「そういえば、あの頃から風間は言ってたもんね。祥太の浮気はDVと同じようなもんだって」

――祥太のDV、いつまで許すつもりだ?

風間がそんな事を聞いてきたのは、大学二年の春先だった。
別に祥太に暴力を振るわれた覚えはなかったから、わけが分からず首を傾げた私に、風間が続けた言葉はこうだ。

――傷つけられんのが身体でも心でもDVって言うんじゃねーの。

浮気をして私を傷つける祥太の行為をDVだと、風間の中では認識されていたらしい。
そしてそれを聞いた私も、ああでも確かに似ているのかもなと思ってしまった。

浮気されて傷つけられて。でも浮気した後はいつもに増して優しくなるから、それに流されて許してしまうっていうループ。

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