イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
憎まれ口ってわけじゃなかったから拍子抜けしたっていうのもあるけれど、代わりに言われた言葉がすんなり頭に入ってこない。
だって、回数が違うからなんて頭になかったから。
浮気については、一度でもした事があるタイプか、まったくないタイプかのどちらかだと思ってた。
「一度裏切ったら、何度裏切っても同じだと思ってた」
呟くように言うと、顔をしかめた風間が、「そうか? 俺は、違うと思うけど」とすぐに返してくる。
「一発殴ってきたヤツと、その後も間髪入れず殴り続けてきたヤツとじゃ、恨み方違うだろ」
「……その前に、例えがひどすぎて頭に入ってこない」
「祥太の事だけど」
それのどこが祥太の事だと言い返そうとして……風間の言おうとしている事が分かった。
じっと見つめる先で、風間も私を見る。真剣で、少しツラそうな瞳で。
「殴ってなくても、傷つけてんのは同じだろ。
ただ、身体が無事なだけで身体ん中は何度も何度も傷つけられてんだから」
少しの間、ただ風間と見つめ合っていた。
お互い何も言わずに、ただ、じっと。
そして、その沈黙を破るようにして、「そうかもね」と呟く。