イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
『風間には祥太から連絡してみて。いくら同じ会社っていっても顔合わせない日もあるし』
……まぁ、嘘だけど。
それに、風間となんて、昨日の今日で一体どんな顔して会えばいいのかも分からないし。
と、心の中で呟きながら返信する。
風間というのは、風間彰大(あきひろ)の事で、祥太の大学の頃からの友達だ。
私に紹介されたのは、確か、大学一年の初夏の頃だったと思う。
それから、月に何度かは三人で会うようになって、風間は私からしても友達と言える関係になっていった。
人懐っこい犬みたいな性格の祥太の友達だっていうから、最初は祥太と同じタイプを想像していたけれど、風間は犬ではない。
動物に例えるなら狼だとかそんなところが適当に思う。
態度は割と傲慢で、自分勝手なところもあって口も悪い。
ずけずけと物を言う態度には違和感というか嫌悪感みたいなものも感じたけれど、それも最初だけだった。
垣間見える優しさだとかを見るうちに、ああなんだ素直になるのが苦手なのかと気づき、それからは反抗期の弟でも見る目線で付き合ってきた。
ふん、って鼻を鳴らした態度で何か言う風間を、はいはいと軽くあしらって、それにまた風間が言い返す。
風間がそんなだから、私も言いたい事を遠慮せずに言えるし一緒にいて気が楽だったし楽しかった。
そんなケンカ友達のような関係は私にとっても心地よく、絶対に口には出さないけど、祥太のおかげでいい友達ができたなぁなんて思っていたのだけれど。
恐らく……昨日の夜から私と風間の関係はいい友達ではなくなってしまっている。
いうなれば、悪いお友達なのかもしれない。