イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
仕事中の雑談としてはふさわしくない話題になってしまい、お客様がいないとはいえそろそろやめた方がいいかもしれないと思っていた時。
後ろから頭をポコンと叩かれる。
ポコンって音がしたのは私の頭の中身の問題じゃなく、恐らくパンフレットか何かを丸めたもので叩かれたからだ。
そして私の頭にそんなものを叩きつける社員は、この支店にはひとりしかいない。
「仕事中になんの話してんだよ」
「……なんの話だろうね」
まぁ、頭を叩かれても文句は言えない話題だっただけに、ポコンと音のするツッコミに対する注意はスルーする。
風間が着ているのは、黒い上下のつなぎ。整備服だ。
「もっと健全な話しろよ。受付嬢がふたり揃ってBLだのGLだの」
「風間さん。BLは確かに不健全で汚らわしいですが、GLを同じ括りにするのはやめてください。
清らかで可憐な女の子同士の話が健全じゃないハズがないじゃないですか。むしろ健全純潔そのものです」
キリっとした態度ではっきりと言う村田さんには風間ももう呆れているのか、何も言わずにため息を落とす。
村田さんのそういう一面はもう、支店内では周知の事実。
そのおかげでお客様やたまにくるタイヤや部品メーカーの営業以外は村田さんに言い寄る事もないから、彼女もイキイキと仕事をできているというわけだ。
昼休みなんて、男性社員と一緒になってグラビア雑誌を開き、どの子のどの部分が好きだとかのいわゆる猥談みたいなもので盛り上がってるし。