イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
「実莉先輩、仕事もできるし小柄でこんなに可愛らしいのに、なんでダメ彼氏の毒牙になんか……」
く……っ、と心底悔しそうに顔をしかめる村田さんに、風間が眉を寄せる。
「でもこいつ、生意気だろ」
「そこも可愛いじゃないですか。勝気な女の子大好きです」
「あと、頑固な部分あるし、真面目だし」
「芯を持ってるって事ですよ。真面目は長所ですし」
「それに、生きるの下手だし」
「だからこそ、守ってあげたくなるんじゃないですか」
なんだ、生きるの下手って。それが本当だったら致命的じゃない。
その前に生意気だの頑固だの言ってくれちゃって、後輩の前で私を貶めるなんてどういう嫌がらせだと思いながら睨んでみたけど。
風間は村田さんをじっと見た後、ふーん……と呟いた。
ムっとした顔だ。今の会話の何かが気に入らなかったんだろうか。
「なに不貞腐れた顔してんの? 風間、私の悪口言ってただけなのに」
「別に。つーか、これ。新しいパンフレット来たから並べておけ」
「ああ、新車のね。分かった」
風間が、茶色い包み紙に包まれたままの新しいパンフレットを受付の台の上にドンと置く。
さっきツッコみ道具に使われたのは、その見本として外に出ている一冊のようだった。
茶色い包みの上に置かれた一冊が、跡がついてくるんと上に丸まっている。