イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
この話を祥太にした時。祥太は、開口一番、楽しそうな仕事で羨ましいと言った。
『いいなー! 俺もそういう仕事したい。遊んでるみたいなもんじゃん』なんて。
別に悪気があるわけじゃなく、祥太はそういう仕事を楽しみながらできるタイプの人間ってだけだとは分かってたし、私も特にそれに対して何かを言ったりはしなかった。
人懐っこい性格の祥太には営業職はもってこいだと私も思うし、きっと私がしたような小さな夏祭りの仕事を祥太は楽しんでできるんだろう。
だから、その発言に深い意味があるわけでもないと思ってはいたけれど……やっぱり心のどこかでは別に楽なわけじゃないのにな、とか、大変な部分もあるのに、とか、そういう小さな主張も生まれていたのは事実だ。
受付としての私の仕事は、祥太からしたら楽しいと分類されるものばかりなのかもしれない。
それでも私にとっては大変だと思う事だってあるし、毎日の仕事を楽にこなしているわけでもない。
先日の居酒屋で、祥太に“実莉はいいよなー”みたいな事を言われて過敏に反応してしまったのは、そういうもやもやが溜まっていたからだ。
そんな、祥太へのチクチクした思いがあったからなのか。
風間の言葉に、正直認められたみたいで嬉しくなってしまって。
追い返したいのに、どんな顔をすればいいのか分からなくなる。