イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―


「これ、パンフレットですっ。あの、私たち、三年一組なんですけど甘栗売ってるのでよかったら買いにきてくださいっ。サービスします!」

きゃあきゃあと賑やかな声に振り返れば、校舎入口にいた女子生徒たちに捕まる風間の姿があった。
愛想をこれでもかってほど振りまいてくれる彼女たちに、風間は笑顔を返すわけでもなくもらったパンフレットを片手に再び私の隣に並んだ。

「ん。おまえの分ももらってきた」
「ありがとう……でもこれ、あの子たちが風間にってくれたんでしょ?」
「は? パンフレットに誰からもらったも誰にやったもないだろ」

まぁ、それは至極普通な意見ではあるけれど。
風間の後方から睨みつけるような視線を送ってくる女子高生たちにとっては、風間に渡したってところが大事なようにしか思えない。

まるで矢のように背中を刺す視線にわざと気づかないふりをしながら、校舎内に足を踏み入れた。

来客用と書かれた緑色のスリッパを履いて、廊下を歩く。
六年ぶりの校舎は変わっていなくて、歩いているだけでじわじわとテンションが上がっていくのが分かった。

中高一貫の母校には、中等部と高等部があるから、祥太と私はこの学校で六年間を過ごした事になる。


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