イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
周りには好かれ放題で引っ張りだこだけど、自分から強引に引っ張る相手はそう多くない。
その中に私もいるんだって事実は……多分、私の中で祥太との関係を支えるひとつなのかもしれないと思った。
祥太に特別に想われてるんだっていう自信として。
白い塗り壁には煉瓦がたくさんはめ込まれていて、ドアは木調。壁も窓もドアも、アンティーク調でオシャレだ。
聞いていた通りの可愛らしい雰囲気の店内には控えめなBGMが鳴っている。
それを聞きながら、ふたり分のオーダーを済ませてメニュー表をテーブルの隅に戻した。
そこで、向かいの席から送られてくる視線に気づく。
「どうしたの? なんか嬉しそう」
「なんか、実莉とこうしてゆっくりするのって久しぶりだと思って。
最近、俺も実莉も忙しくてふたりで会えなかったから」
「そう言われてみればそうかもね。
でも、二週間くらい前に、風間入れて三人で居酒屋で会ったじゃない」
言いながら、二週間前に会ってればそう久しぶりでもないだろうと考えている自分に呆れる。
これも、付き合い始めとは変わった部分だ。
私は週に一、二回はふたりきりで会いたいと考えていたけど、友達の多い祥太はそういうわけにもいかず。
最初こそ、寂しいだのなんだのと言った事もあったものの、結局私が引いて、祥太に合せる形に落ち着いたのは、もう随分前の事だ。