イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
「いや、使ってくれてるのは嬉しいんだけどさ、やっぱりどうせなら彼氏らしいもんを送りたいと思うんだよ」
困り顔で笑いながら言う祥太に、胸の奥が小さく鳴く。
こういうところを可愛いなぁと思う気持ちは昔から変わらない。
形に拘っているわけじゃないけれど、俺は彼氏なんだからこうしてやらないと!みたいに変に意気込んでたり張り切ってたりする部分が可愛い。
見ていて、こっちまで温かい気持ちになるような、そんな感じだ。
付き合ってもう七年も経つのに、一生懸命彼氏をしようとしてくれているのは素直に嬉しい。
「ああ、でも絶対ケーキは買うからな! 食べに行くにしても買うにしても、俺が考えて用意するから実莉は何も用意するなよ」
そんな事を人差し指を突き付けて注意する祥太は、一昨年の誕生日の事をまだ根に持っているのかもしれない。
一昨年の誕生日、祥太は前日から風邪で寝込んでしまって。
けど、祥太がケーキを楽しみにしてたのは知ってたから、私が自分で買って祥太の家にお見舞いとして届けたら怒られてしまった。
俺が買ってやるって言ったのに!って。おでこに貼った冷却シートがシュウシュウと熱で湯気立てるのが見えるくらいの勢いで。
どう考えてもその状態の祥太がケーキを買いに行けるハズもなかったのに、それでも自分が用意してやりたかったんだと怒った後、しょぼんと落ち込んでしまって。
その後、でもこんな時に風邪を引いた自分がそもそもいけないんだよな……と反省する祥太と、ふたりでケーキを食べたのを思い出す。