イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
祥太は、決して私をどうでもいいと思っているわけじゃない。
大切に想ってくれてはいるんだ。多分、誰よりも。それは私にも伝わってくる。
ただ……泣きつかれると断りきれなくて、私には説明すれば分かってもらえるだろうって、判断してしまうだけで。
祥太が私を買い被りすぎているのもひとつの原因なのかもしれない。
きっと許してくれるから大丈夫だって、変な信頼が祥太の中には多分ある。
そして、それはきっと私が最初に笑って許してしまったせいで。
途中、その事に気付いたけれど……遅かった。
祥太と話していると分かるけど、祥太は浮気した子たちを、本当になんとも思ってないのが分かる。
断りきれなくてって、ただそれだけで。だからこそ、それほど重くとらえてもいなくて。
告白してきた子たちへの想いと私への想いは、そもそも大きさも種類も違うんだから私も平気で許すと思っているみたいで。
それはもう、価値観の違いと言えばそれまでなんだという結論に至ったのも随分前だ。
風間と出逢った頃かもしれない。
「はぁー。でも実莉といると落ち着く」
そう言った祥太が、テーブルに置いてあった私の手をきゅっと握る。
カフェの店内で手を繋ぐなんてバカップルみたいで嫌だと言おうとしたものの。
ニッコリと幸せそうに微笑む祥太に、喉まで出てきていた注意の言葉が出てこようとしない。
本当に私はこの笑顔と、必死に謝る姿に弱いなぁと痛感する。
そもそも好きになったきっかけが無邪気なこの笑顔だったのだから、当たり前なのかもしれないけど。