イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
「仕事、大変なの?」
「んー。やっぱりノルマとかあるし。俺、今月達成できなかったから課長に怒られたりしてさ」
「そうなんだ……」
「だから、今日は実莉に会いたかったんだ。
やっぱり疲れた時には自分の一番大事な人に癒されるに限る」
そんな事を平気で言う祥太に、思わず苦笑いが浮かんでしまう。
もちろん、嬉しいとは思うけど……同時に、本当だろうかと疑問も浮かぶようになったのは、浮気されてからずっとだ。
一番大事だなんて、まるで二番や三番がいるような言い方が引っかかったものの、特に聞く気にもなれなかった。
こういうのも、ずっと昔から。
祥太が初めて浮気をした後から、常に言葉や行動に浮気相手の影を探すようになってしまったのは悪いクセだ。
そんな事を言えば、そんなクセがついても仕方ないほどの事を祥太がしたんだろと風間に言われてしまいそうだな、とまたひとつ苦笑いがこぼれた時。
「あ、そういえば、昨日今日って中学高校の文化祭だって知ってたか?」
祥太がそんな事を言い出した。
風間の事を思い浮かべていた時に急に言われて、そのタイミングのよさに驚く。
楽しそうな笑顔で言う祥太に、頭の中を読まれていたわけではなさそうだとホっとしながら頷いた。
「うん。知ってる。お知らせメールきたし」
昨日、風間と行ったし。