イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
「いつもは行けないような遠い場所に泊まりとかさ。スイートとかはさすがにとってやれないけど、ちょっといいホテルとかなら。
結構いい案だろ? して欲しい事とか、行きたい所とか、そういうのなら実莉もひとつくらいはあるだろ?」
「して欲しい事……」
いいアイデアが出て嬉しいのか、ニコニコと笑いながら言う祥太に、呟きながら考える。
して欲しい事……なんだろう。
「それも特にはないかなぁ」
「またかよー。なんかあるだろ? こう……あ、ほら、一日お姫様扱いとか!」
「それはなんか恥ずかしいから嫌かも」
「んー、じゃあ……豪華ディナーを俺が作るとか!」
「えー、無理じゃない? だって高校の調理実習、祥太の班いつもちょっとした騒ぎだったし」
「それは……まぁ、確かにな。んー……実莉、なんかないの?」
困った顔で聞かれて「んー」と、私も祥太と同じような声を出して考える。
なんだろう……。祥太にされて嬉しい事って。
祥太に……して欲しい事……。
そう考えているうちに、意識が自分の中に潜りだす。
お洒落なBGMも、周りのガヤガヤとした話し声もどんどん遠のいていく。
ぼんやりとしながら、私が祥太に望んでいる事って……と考えを巡らせるのに答えが見つからない。
浮気をしてほしくないとか、あるって言えばあるけど、それは言ったところで守られる約束じゃないのは分かってるから、言葉にはできない。