イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―


じゃあなんだろう。私、どうして欲しいの……?
祥太に……。

分からなくて、でもなんでだかぽっかりと空いてしまっている気持ちに悲しくなって……無意識に「祥太に、優しくして欲しい……」と声が漏れてしまって。
他人の声みたいに聞こえた自分の声にハッとした。

「――あ」
「ごめん。今、なんて言った?」

なんでもないって言おうとしたより先に、食いつかれてしまって困る。
ボールでも見つけた犬みたいに目をキラキラさせて私の言葉を待つ祥太を見つめながら、まぁでも優しくして欲しいとかなら無難なお願いかもと、そう言葉を繰り返そうとしたのに……できなかった。

なんだか違う気がして。

優しくして欲しいって思うのは本当だけど、でも、違う。
私は、祥太の私に対する態度にだったら満足してるし、祥太は私をぞんざいに扱ってはいない。
大切にされてるのは、ふたりでいる時間の中でこれでもかってほどに伝わってくるもの。

イベントのたびに、形にもしてくれてる。
だから、優しくして欲しいなんていうのは違う。

じゃあ……なに?
私は祥太に何を望もうとしたの? 何を思って、優しくして欲しいなんて言葉が口をついたの?

祥太に、私は――。

潜り込んでいた意識が、続きそうになった言葉に気付いた途端……自分の本当の願いに気付いた途端。
背筋がすーって冷たくなった気がした。


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