イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―


「ごめんね、あの子、基本的にいい子なんだけどちょっと血の気が多くて」

こんな説明で足りているのかは微妙だけど、祥太もその辺鋭い方じゃないし下手に言い訳をしても、そっちの方がドツボにはまりそうで面倒だ。
そう思ってそれだけで済まそうとした私に、祥太は複雑そうな面持ちをしていて。

「ふざけて言ってるだけだから、気にしないで」

そんな祥太を丸め込むように強めに言った。

「ああ、そういえば行きたいところ思い出したよ。
今日はもう無理だけど、今度水族館行きたい。大学の頃、二回くらい行ったところ」

話をぐいっと、思い切りぐいっと引っ張って元に戻そうとした私に、祥太が一拍置いてから「ああ、あそこな」と笑う。

「行くなら朝から行かないとだから、今度予定立てて行くか。確か実莉、あの近くで寄った店であんみつ食べてすごいおいしいって言ってたよな。
せっかくだしそこも寄るか」
「うん。……よく覚えてるね」
「当たり前だろー? 俺は実莉との思い出はちゃんと一つ一つ大事にしまってるから」

祥太の笑顔がいつも通り戻った事に一安心してから、おすすめプレートにフォークを刺した。

私の前の席で、「実莉が大事」だと無邪気に笑う祥太と、それを聞いてなのか後ろの席で憎悪に近いオーラを燃やす村田さんの間に挟まれて……。
人気カフェにいるハズなのに異常に居心地が悪かった。




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