イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―


いつか風間が言っていた、祥太の心のDV発言。
もしかしたら、私の心につけられたいくつもの傷が治らないせいで、その中にある祥太への想いが見えにくくなっているのかもしれない。
傷だらけになったガラス玉みたいに。

そうだとして、この数多の傷は……いつか治る事があるのだろうか。
完治して、中にある高校の時に祥太に抱いていたような純粋な恋愛感情がキレイに見える時なんて、くるのだろうか。

だけど……そうまでして、祥太と一緒にいたいと思ったのだって事実なんだ。
傷も、その中に閉じ込めた想いも。全部、祥太の傍にいたいって願った私がした事だ。


「もー、怖いですよー。睨まないでください」

カフェでの遭遇事件があった、翌週月曜日。
私よりも先に出社していた村田さんを見ていると、目が合うなりそんな事を言われる。

まぁ、そう言われても仕方のない程度は目つきをきつくして睨んでいたのは事実だ。

「私のダメ彼氏を嫌うのは勝手だけど、本人目の前にしてあんな事言うのはやめて」
「すみませんー。これがいつも実莉先輩を思い悩ませてるダメ男かと思ったらつい……。
でも、思ってたのとちょっと印象違くてびっくりしました」

本当に反省してるのかは微妙だけど、とりあえず謝ってくれたし祥太ともそのせいでどうにかなったわけでもないから、それ以上責めるのはやめる。
カウンターを拭き掃除している村田さんに、私も雑巾を持って加勢しながら聞く。


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