イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―


「事実を見ればそうじゃないですか。
誰にでも優しいから、平気で浮気するんでしょうし。それって短所でしょ、少なくとも実莉先輩にとっては。
……ああ、でも浮気相手にとっても短所ですね。一度きりでいいなんて言い出す女側にも問題大ありですけど、ちゃんと気持ちに応える気はないくせに求められるまま一度だけ関係持つなんて、本当の優しさじゃないですもん」

黙った私を見た後、村田さんは「そう思いませんか?」と私の後ろにいる風間を覗き込むようにして聞いた。

「実莉先輩のダメ彼氏の優しさって、誰にとってもズルいし残酷以外の何物でもないですよね」

確信している口調で聞く村田さんに、後ろをチラっと見てみると、風間は私が振り返る前からこっちを見ていたのか、すぐに目が合った。
そして、風間は私に視線を合わせたまま答える。

「価値観の問題なんだろうけどな。あいつは、本当に関係持った相手に気があるわけじゃないし。ただ、周りみんなに優しいってだけで。
けど、一番大事にしなきゃいけないヤツを傷つけてまで他のヤツに優しくする意味が、俺には理解できないけど。
そんなもん、ただの自己満足だろ」

一瞬、時間が止まったかと思うほどの衝撃が走った。
それは、風間の言った言葉に驚いたからだけど……決して友達である祥太をひどく言ってるからじゃなかった。

心のどこかでずっと思ってきた、誰にも言ってない事を言い当てられた気分になったからだ。
昨日祥太に、して欲しい事を聞かれた時、頭を過った事を……言葉にされてしまったから。

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