イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―


「おまえだって、誰彼かまわず向けられる祥太の優しさに不満だとかを感じてるんだろ?」

――ずっと、思ってた。
祥太の誰にでも優しいところは好きだけど……そこに私だけの特別はないのかなって。

祥太は私にも優しい。でもそれは周りにいる子全員に対する優しさと同じで……それを感じる度に疑問を感じてた。

だけどそれは、祥太の長所だ。付き合う前には、みんなに優しい祥太に苛立ちだとかそんなのを感じたことはなかったし、そこも好きだった。
なのに付き合い出した途端、それが嫌になってしまうなんて、私がわがままになってしまったに決まってる。

だって、誰にでも優しいところを嫌だと思ってしまうなんて……どう考えたっておかしい。
ずっと好意的に感じてきた部分を、付き合い出した途端、嫌になってしまうなんて。

私のために、他の子の気持ちをバッサリ切って傷つけて欲しいなんて……。

昨日うっかり口にしそうになった、ひどく自分勝手な願いに気持ちが冷たくなっていく。

そんな事を願う自分に気付いたのは昨日だ。
だけど……それはきっと、ずっと前から私の中にはあった気持ちだって、すぐに気づいた。

ただ、そんなの間違ってるって思ったから、気付かない振りして閉じ込めてただけだ。
それを昨日、うっかり開けてしまっただけの話で。

祥太の平等な優しさが不満だなんて、そんな事思ってるって誰かに知られたらおかしいって非難されてしまうかもしれない。
そう思ったから、自分自身でさえ気づかない振りしてきたのに。

見事に言い当てた風間に、すぐに言葉が出なかった。


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