イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
大事にしてくれてるって、分かってるのに。
たくさん、形にしてもらってるのに。
形になっていない、やりきれない気持ちの方が大きくなるなんて事があるのだろうか。
シャーペンだって、タオルだって、ピアスだって、ネックレスだって……イオン発生器だって。
全部、持ってるのに。
それを信じ切る事ができなくて、祥太は私が本当に大事なのかな、なんて疑問が浮かんじゃうのは……なんでだろう。
目に見える想いじゃなくて、目に見えない不安や不満に目の前を覆われてしまって……祥太が、見えなくなる――。
「先輩? どうかしました? ぼーっとしちゃって」
戻ってきた村田さんに顔を覗き込まれてハッとする。
慌てて、なんでもないと首を振ると、疑るようにジッと見つめられて苦笑いが漏れた。
「本当になんでもないって」
「でも、そんな顔には見えませんでしたけど。もー、ダメ彼氏の事なんて考えるのやめた方がいいですよ?
大体、先輩がいるのに他の女にいいとこ見せようなんて、結局ただのエゴ野郎なんですよ」
「……そうかもね」
嫌そうに眉間にシワを寄せて言う村田さんに、目を伏せて呟くようにして頷いた。