イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
三田さんはうちの会社にタイヤの販売にくる営業だ。
いかにも営業って感じの、軽くて人当たりのいい人柄で、見た目は可もなく不可もなく。
ただ、相当女好きらしいって話をうちの営業から聞いてから一気に嫌いになってしまった。
女好きだとか浮気性って言葉に過剰反応しすぎているのは自分でも分かるけど、こればかりは仕方ない。
性格の問題だ。
そう考えると、祥太を許せているのは本当に特例なんだなと気づかされる。
なんだかんだ思う事はあるけれど、どういう位置にしろ祥太は私の特別なんだなって。
「村田さんはダメって言うし、立花さんはどう? 食事」
デリカシー皆無の発言を平気でしてきた三田さんを思わず鼻で笑ってやりたい衝動に駆られたけれど、我慢する。
さっき、散々しつこくしたせいで村田さんが仕事中だって事を忘れて「底辺レベルの男の分際で私に近づかないで」とか言い放ったのを聞いていたからだ。
三田さんはその辺鈍いのか、おかしいのか、むしろ虐げられたいのか分からないけれど、特に気にしてはいなそうではある。
それでもあんな発言はこの上なくマズイから後で村田さんに注意しなくちゃだし、受付ふたりして三田さんに暴言を吐くわけにはいかないから私だけでも気を付けないと。
こんなのが原因でYMタイヤと何かあったりしたらマズイどころの話じゃない。