イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
「アレルギーが激しいのですみません」
嘘も方便だと、そう言ってやんわり断った私に、三田さんは「どうせそれも冗談でしょ」と笑う。
「まさか」
「じゃあさ、何のアレルギーがあるんだが教えてよ。それ以外の食材しか出さない店探すから」
「すみません。仕事で知り合った方と個人的なお付き合いをするのは会社から禁止されているんです」
「そんなの建前だけだって。
もし立花さんと俺が結婚したりすれば、両社をより強い絆で繋いだとかそういう話で盛り上がると思うけどなぁ」
「……はは。さっきまで村田さんに言い寄ってたのに、もう私と結婚ですかー」
あくまでも冗談っぽく。でも胸の中では皮肉でいっぱいだった。
余程女に飢えてるのか、それとも営業が言ってたみたいに根っからの女好きなのか。
村田さんがこちらに気づいてわなわなしているのが視界の隅に入ったから、もうこれ以上失礼のないように、こっちには来ないようにとアイコンタクトする。
私の意図が伝わったのか。村田さんが納得いかなげに顔をしかめてから、トレーにカップを乗せて奥に戻ったのを見て、とりあえず胸を撫で下ろした。
「付き合うのは村田さんみたいな子がいいけど、結婚するなら立花さんみたいな人がいいよね。
立花さんは男を立ててくれそうだし。浮気とかも、大目にみてくれそう」
村田さんと私のやりとりに気づく事なく、三田さんが呑気に言う。
適当にやりすごそうと思っていたけれど、さすがに浮気とか言われてムっとしてしまう。