義兄(あに)と悪魔と私
地元では名の知れた高級住宅街、その一等地にある新しい家。
これまで質素な暮らしをしてきた私達にとって、これほど似つかわしくないものはない。
「いいよ。綺麗だし……片付いたら遊びに来てね」
「うん。行く行く! それにしても円のお母さん羨ましいなー。玉の輿でしょ?」
私は曖昧に笑った。
今では母のことを羨ましいと言う麻実に、素直に頷くことなどできなかった。
それに本当は――片付けが終わっても麻実を家に呼ぶことは出来そうにない。
何故なら……
「円、新しいクラス、張り出されてるよ!」
玄関を入ってすぐ、廊下の掲示板にちょっとした人だかりができていた。
私の高校は、新学年になるとクラス替えがあるのだ。
そして掲示板を見てすぐ、麻実は歓喜の声を上げた。
「やった! 今年も一緒だよ」
麻実は私を見てにっこりした。
私も素直に嬉しかった。次の――瞬間までは。