義兄(あに)と悪魔と私
比呂くんにはきっと分からないだろう。
いつもより少し乱暴なこの手が、どんなに私を苦しめているのか。
どんなに私を溺れさせているのか。
否応なしに反応してしまうこの身体が忌々しい。
それでも私はこの瞬間を幸福だと思ってしまう。
馬鹿なのかと、本気で思ってもいる。
この悪魔に恋をした私は、頭がおかしい。
「……比呂、くん」
私は苦しさと快楽に喘ぎながら、彼を呼んだ。
「……なに」
「過去に……意味があるわけじゃないの……今の母を作っている過去が知りたい。今を知りたいだけ」
私は現状から目を逸らし続けてきた。
それでは何も変わらない。
破綻するのを待つ日々でしかない。
「……やめろよ」
「私は、比呂くんに協力して欲しい」