義兄(あに)と悪魔と私
知っている、本当は。
気づいている、とうの昔に。
比呂くんが本当は、悪魔なんかじゃないってこと。
受け入れられなかっただけだ。今も。
比呂くんを悪魔に変えてしまうほど、私が憎まれていたということを。
「この間は少し嘘をついた。復讐を終わりにしたのは……守りたい人がいるんだ。だから過去を清算したかった。その人にちゃんと向き合うために、自分の罪を償おうと思った」
(そう言えば、麻実が言ってたっけ……)
比呂くんの好きな人、片想いの人。
嫌だ、聞きたくない。ずるい。
「知らない! そんなの私には関係ない!」
私は首を振る。それができる最後の抵抗。しかし、その時は来た。
「そうだね。これは俺のわがままだ。でも、君に何と罵られても、人として当然のことだと思うから。
円……君を酷く傷つけたこと、申し訳なく思ってる。本当にごめん」