義兄(あに)と悪魔と私
「そんな言葉ひとつで、許されると思ってるの……」
刺々しい私の言葉にも、比呂くんは怯まない。
「もちろん許されるとは思ってない。それでも、俺ができる償いはこうすることだけだから。罵っても、殴ってもいいよ。円の気がすむまで」
目を閉じると、涙が次々にこぼれ落ちて頬を伝った。
悪夢のような結婚式から四ヶ月。
私の苦しみがひとつ終わったのだろうか。
だけど、少しも幸せなんかじゃない。
「円……?」
しばらくの間、呆然と空を見つめていた私を、比呂くんが心配そうに覗き込んだ。
「もういいから、どこかへ行って」
「無理」
「なんでっ……」
言ったのは、比呂くんが私を引き寄せたのとほぼ同時だった。
次の瞬間、私は彼の胸の中にいた。