義兄(あに)と悪魔と私
明日からは夏休み。
母の問題はとりあえずは解決の方向へ向かったし、比呂くんからは解放されて。
どうしようか。急にすることがなくなった。
心にぽっかりと空白が生まれてしまったような感覚。
(勉強? 学生だし……)
終礼が終わると、ぼんやりとそんなことを考えながら席を立つ。
生徒玄関へと向かう廊下の途中で、私は不意に足を止めた。
(麻実……)
向こう側から、麻実が歩いてくる。
最近一緒にいる、アキちゃん逹はいない。一人だ。
私は迷った。
向こうも私に気づいて、目が合う。
「――っ」
「円!」
口を開こうとしたその時、背後で私を呼ぶ声。
瞬間、麻実の視線が逸らされた。