義兄(あに)と悪魔と私
 
「行かないってば! もう意味ないから!」
「……?」
「別れてくれるって、お母さん。メールが来たよ。今日、会いに行って終わりにするって」
「……本当に?」

比呂くんは驚きの表情を見せて、少し腕の力が緩んだ。その隙に、私は彼から離れる。

「こんな嘘つかない。だから安心して、私はどこにも行かないし、ついてこないで」

そう言って、私は駆け出した。振り返ることはできなかった。

苦しくて、胸が張り裂けそうだ。
罪悪感からの優しさなんて、いらない。
それならずっと憎まれていた方がよかった。
私もきっと彼を許さずいられただろう。

この感情を、どうしたらいい?

どうにもならない現実から逃げるように、家に帰るとすぐに自分の部屋に閉じこもった。
 
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