義兄(あに)と悪魔と私
ご飯の後は、お風呂。その後はいつも通りにベッドに入った。
だけど、朝になってもとうとう母は帰ってこなかった。
「俺、父さんに連絡するよ」
翌朝、比呂くんが私の部屋に来て言った。
比呂くんも悩んだ末の決断だっただろう。
おじさんに言えば、全てが露見する。
しかし、事件に巻き込まれている可能性もあるわけで、これ以上引き延ばすことはできなかった。
置き手紙はない。母が残したのは、私へのメールだけ。
本心では母を信じたかった、けれど。
比呂くんが電話をかけに行った後、私は自分のスマホを手にとった。
発信履歴の一番上には母。実は昨晩、夕食の後一度だけ電話をかけていた。
応答はなし。留守電には何も残さず切った。
今度は……どうしよう。
私は自分でも決めかねたまま、再び発信ボタンを押した。