義兄(あに)と悪魔と私
「お母さんが帰ってきても、もう駄目かもねってことだよ。こんな騒ぎがあっちゃ……おじさんだって気づくでしょ」
比呂くんはまるで何かに感づいたかのように鋭くて、私はドキリとしながら誤魔化した。
「どうかな……父さんって、結構鈍いんだ。昔から。それより、どこに行くんだっけ?」
「お腹すいたから、コンビニ」
「……本当に?」
疑うような比呂くんの視線に、私は必死に平静を装わなければならなかった。
やっぱり比呂くんには言えない。
言えば、止められる。それか、一緒にくると言う。
だけど、比呂くんのお母さんは私の母のせいで自殺した。
これ以上、母のせいで傷ついて欲しくない。
「本当だよ。何か買ってくる?」
「じゃあ、何か適当に食べるもの」
「……分かった」
傷つけたくなかった。だから、嘘をついた。