義兄(あに)と悪魔と私
カバンの中のスマホを手に取ると、かけてきたのは思った通り比呂くんだった。
そろそろ私が戻らないことに気づいたんだろう。
私は歩きながら電話に出た。
「もしもし」
《円!? いまどこ?》
「××駅の近くかな……」
電話の向こうで、比呂くんが絶句するのが分かった。
「嘘ついて、ごめんね。絶対止められると思ったから」
《そんなのいいよ――いいから、今すぐ引き返すんだ!》
「まるで私がどこへ行こうとしてるか知ってるみたいなこと言うね」
私が言うと、比呂くんは黙った。
「別に暴力団の事務所とかじゃないよ。普通の家」