義兄(あに)と悪魔と私
 
それからどうやって北見家を出たのか、あまり上手く思い出せない。

気がつけば一人で駅のホームに立っていて、我に返る。

どうやら北見良隆の目的は、私に出生の秘密を暴露し、母の心を折ることで、話が終わればあっさりと私を帰した。

つくづくあの男の執着は母に向けられている。病的なまでに妹を求める頭のおかしな男。

あんな男の血が自分に流れているなど……耐えられない。

ホームへ入ってくる電車を眺めながなら、いっそ全てを終らせてしまおうか、と思う。

だって、もうどうしたらいいのか分からない。

母は帰って来れないだろう。
そうなればきっと離婚になる。
私はあの家を出てどこに行けばいい?
居場所なんて、どこにもない。
 
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