義兄(あに)と悪魔と私
「嘘だよそんなの。口ではなんとでも言える」
私は比呂くんを拒絶し、その腕を押しのけた。
「じゃあ、どうしたら信じてくれるっていうんだ。
確かに、俺が今までしたことは簡単に許されるようなことじゃない。許されるとも思ってない。それは前も言った。
だけど、俺のこの気持ちだけは信じてくれないか。
でないと、俺ももう……どうしていいのか分からない」
そう言って比呂くんは首を垂れる。その声は微かに震えていて、私はこんな弱気な比呂くんを初めて見た。
「そ……そんなこと言われても困る! 私にだって苦しい……
他の女のために、私に優しくしないでよ。私を言い訳に使わないで。
好きな人がいるなら、さっさとそっちへ行けばいいじゃない!」
比呂くんは、今にも泣きそうな顔で唇を噛みしめる。