義兄(あに)と悪魔と私
「どうしたの、円がこんなに早く来るなんて珍しいね」
意外にも麻実の反応は至って普通だった。
一瞬、私達の間には何もなかったと錯覚するほどに。
だけど、違う。それは。
「うん。比呂くんと一緒になったら嫌だったから」
麻実ははっとしたように私を見た。
「ごめんね、ずっと言わなくて。比呂くんは私の義兄なんだ。親どうしの結婚で家族になった、血のつながらない兄妹。
最初は何となく言いにくくて、そしたらどんどん言えなくなって……」
「……やっと話してくれたんだね」
私が驚いて顔を上げると、麻実は微かに微笑んで言った。
比呂くんに告白して断られた時、彼から親同士の結婚のことを聞いていたことを。
「相手があのヒロ様じゃ言いにくいのも分かるよ。何より、あたしが彼を好きだったんだから。
だけどあの時、動揺して上手く切り返しができなかった円を見て、あたし気づいちゃった」