義兄(あに)と悪魔と私
「それじゃあ、約束だからね」
「えっ……?」
「有坂くんに自分の気持ちを伝えること! じゃないと、仲直りしてあげないから」
「それは……」
無理だ、なんて。満面の笑みで迫ってくる麻実には言えなかった。しかし、かといってそんな約束もできない。
(伝えてどうするの? だって私達は、私と比呂くんは……)
「大丈夫、きっと上手くいくよ」
麻実は言ったが、全てを忘れて恋するには、私と比呂くんはあまりにも負の感情が多すぎる。
これは、何も知らない麻実には分からない。
私は曖昧に笑って、話題を変えようとした。
「そう言えば、前に麻実が言ってたドラマってどうなった? ちょっと気になってたんだけど、なかなか見る機会なくて」
「え……ああ! 砂の恋人?」
「そう、そんな感じのタイトルの」
本当はそんなに興味ない。でも、主人公の境遇が自分と重なって、少しだけ気になっていた。