義兄(あに)と悪魔と私
つい考え込んでしまった私を、麻実が不思議そうに見ていた。
「そうだよね。作り話だって分かってるんだけど、なんだか馬鹿だなーって思って」
「馬鹿? どうして?」
私の言葉に、麻実は首をかしげた。
「だって、不倫とかレイプとか、その結末が幸せになれるわけないと思わない? それなのに自分から不幸になりにいくなんて」
「……幸せになれるかどうかなんて、誰にも分からないよ。そうやって、結果を決めつけて諦めるのは円の悪いくせだよ」
麻実の言ってることは、ごもっとも。
だけど頭で理解できても、心は許容できない。
そんな私に、麻実は優しく諭すように言った。
「やってみないと結果なんて分からないんだよ。何事も」
胸がざわめく。
理由はとっくに気づいている。