義兄(あに)と悪魔と私
 
「大丈夫、何でもない」

学校が終わって、これから母の病院に行くところだったことを思い出す。

「本当に? 熱でもあるんじゃ……」
「少し寝不足なだけ!」

心配して、私の額に手をあてようとした比呂くんの手を強く振り払う。
比呂くんは少しショックを受けたような顔で手を引っ込めた。

「……ごめん」

比呂くんは言った。
違う、謝らなければいけないのは私の方。
だけど、そんな言葉は出てこない。

イライラが収まらない気持ち。
ざわざわと落ち着かない心。

(私は……)

私達はほとんど会話もないままにバスに揺られ、母の病院に着いた。

「やっぱりやめておく?」

比呂くんが口を開いたのは、ちょうどバスを降りた時だった。
 
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