義兄(あに)と悪魔と私
 
次の瞬間、私は地面に投げだされ尻餅を着いていた。

同時に聞こえた、何かがぶつかる音。
怖々と閉じた目を開くと、少し離れたところに赤いものが見えた。血だ。

当然だけど、それは私のじゃない。
だって私は何故か歩道の端に座り込んでいて、ほとんど無傷だ。

(……じゃあ、誰の?)

ドラマの主人公は、愛した人と死に別れた。
不意に頭を頭をよぎった、麻実の話。
違う、それは、ただの作り話。
比呂くんと私の話じゃない……

「――比呂くん!」

十メートルほど先に、私の代わりにトラックにはね飛ばされた比呂くんが倒れていた。
考えるより先に、彼に駆け寄る。
擦りむいていた膝の、痛みは感じなかった。

「比呂くん! 聞こえる!?」

頭から大量に出血していた比呂くんは、私が呼ぶとゆっくりと瞼を上げた。
 
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