義兄(あに)と悪魔と私
次第に弱々しくなっていく声。それはもう、ほとんど息のようだった。
どうすれば、比呂くんを救えるのか。
パニックに陥る頭で必死に考えても、今にも消えそうな命の灯を見れば、そんな方法はないように思えた。
「恨んでないよ……もう、いいよ。全部許すから、だから、お願い」
瞼が重くなっていく比呂くんの意識が消えないよう、私は懸命に言葉を紡いだ。
今なら、ドラマの主人公の気持ちも少しは分かる。
例え未来が見えなくても、目の前にある微かな幸せが欲しいと思う。
笑って欲しい。好きな人には、幸せな夢を見て欲しい。
「死なないで……比呂くん。お願いだよ」
この先なんて知るもんか。
どうせもう十分不幸なんだ。
これ以上なんて、私にはない。