義兄(あに)と悪魔と私
番外編
追憶
円と初めて会ったのは、まだ母親を亡くして一ヶ月しか経っていない頃のこと。
突然、結婚したい人がいると言われて、俺の中で父親への疑念が膨れ上がる中、食事会の日を迎えた。
「初めまして、北見円です。母から聞いたんだけど、同じ学校なんだってね。これからよろしくね」
自分でも説明がつかない、不思議な感覚。
ほんの一瞬だけ、母親の自殺も父親への不信感も、全て忘れた。
可愛い、と思った。
決して派手じゃなく、控え目で、同世代の女の子達より少し大人っぽい。
地味で華がないという人もいるかもしれないが、俺はそうは思わなかった。
円は学校での俺を知らず、ミーハーなところもなくて、俺は落ち着いて時間を過ごせたし、彼女と家族になることに悪い気はしなかった。最初は。