義兄(あに)と悪魔と私
父親の浮気と、母親の自殺の理由を知ったのはそのすぐ後。
底無しに沸き上がり、増大していく父親と良子さんへの嫌悪感を俺は次第に消化しきれなくなっていく。
文武両道の優等生、誰にでも公平で優しく、誰からも好かれる。
そんなイメージが自分についているのは知っていた。
この黒い感情は、コウにすら話せない。父親なんて論外。
こんな時、兄弟でもいたらよかったのか。
そう思った時、ふと円の顔が思い浮かんだ。
彼女は知っているのだろうか。
……いいや、知っているはずがない。
そうでなければ、あんな汚らわしい二人を祝福などできるものか。
不公平だ。俺ばかりが苦しまなければいけないなんて。
微かな好意が、おぞましい憎しみへと変わる。
彼女に罪はない。そんなことは知っていた。
だけど、もう止められなかった。
全部、壊れてしまえばいいと思った。