義兄(あに)と悪魔と私
真っ赤なカーテン、天蓋つきのベッド、花柄のクロス、シャンデリア……
初めて足を踏み入れた異空間に、クラクラする。
そんな私を見透かすように、比呂くんは笑った。
「強がらなくてもいいよ」
「私は別に……」
「じゃあ遠慮なく」
不意に比呂くんが私を引き寄せ、自分の唇と私のそれを乱暴に重ねた。
「……ぁ……っ、――いやっ!!」
口内を舌に犯される感触に耐えられず、私は思わず比呂くんを突飛ばしてしまう。
しかし、私程度の力ではお互いの顔が離れた程度だった。
「ここまで来といて、今更分かってないとかないよな?」
比呂くんは私から離れると、呆れたように息を吐いた。