義兄(あに)と悪魔と私
「こんなことが望みなの? 私のこと好きでもないのに?」
「男はさ……例え大嫌いな女でもやれるんだよ」
「……」
「……もういい?」
比呂くんは面倒臭そうに言うと、私の肩を掴んでベッドに押し倒した。
視界が反転して、比呂くんが覆い被さってくる。
ブレザーのボタンはあっという間に外され、白いワイシャツの下に、私のものではない手が滑り込んできた。
「ひっ……ぁっ、いや――やめて!」
分かっていた、つもりだった。
だけど実際は、乱暴な手に触れられるだけで身体が震え上がってしまう。
手足をバタバタさせて懸命に抵抗を試みると、比呂くんは動きを止めて私を見た。
「大声でも出せば、誰か助けてくれるかもな? 多分防音だけど」
言って、見下すように笑う。
「間違っても自分が被害者とか、勘違いするなよ。君は選べる。母親の不貞を隠す為に、望んでこうなったんだろう? やめるなら、今が最後だよ。どうする?」