義兄(あに)と悪魔と私
奴隷契約
これは、夢かうつつか。
そんな霞み掛かった意識の中で、私は目覚ました。
「ああ、気がついた?」
近くで、感情のない声がした。
顔を向けると、比呂くんが服を着ているところだった。
行為の最中、痛みのあまり気を失ってしまったらしい。
その後のことは、幸か不幸か何も覚えていなかった。
「身体、大丈夫?」
そう訊ねながらも、少しも心配しているようには見えない。
どの口が言うのか、と思っても、口に出す気力もなかった。
「怒ってんの? まぁ、そうだよね」
「……最後まで、したの?」
私が口を開くと、比呂くんは少しだけ驚いた顔をした。
「したよ。あ、大丈夫。避妊はばっちり」
その瞬間、間違いなく心のどこかで安堵した。そんな自分を嫌悪する。