義兄(あに)と悪魔と私
 
家族四人での食事会は午後六時から。
けれど、比呂くんが声をかけに来てくれた後、待っても待っても母は戻らなかった。

(遅いな……お母さん、何してるんだろう?)

式が終わってすぐ、御手洗いに行くと言って離れた母。
一時間以上経っている。いくらなんでも遅い。

何かあったのかもしれないと、心配になった私はトイレに様子を見に行く。
しかし、そこには誰もいなかった。

(あれ……??)

入れ違いになってしまったのかと、私は新婦の控え室へと向かおうとする。

「――――」

その時、遠くで母の声が聞こえた気がした。

(お母さん? どこ?)

私はなんとなく、トイレの窓から外を覗いてみる。
 
< 3 / 228 >

この作品をシェア

pagetop