義兄(あに)と悪魔と私
窓の外は、教会の庭になっていた。
綺麗に整えられた花壇、その端で母が男の人と口論をしているようだった。
会話は聞き取れない。しかし、声色と母の表情から、良い雰囲気ではないことは分かる。
(誰と話してる……?)
こちらに背を向けているので顔は分からないが、背格好から有坂さんではない。
口論はそのまま数分続いた。
私は何故か目が離せずに、覗き見るように二人を凝視していた。
たまに男の方が母の手を掴み、母がそれを突き放す……そんなやりとりがあってヒヤリとする。
(大丈夫。きっと何でもない)
いつの間にか、そう自分に言い聞かせるようになっていた。
様子が変だと思いながらも、その場に釘付けになる。
そして――ようやく母を呼びに行かなければと思い立って、その場を離れようとした時だった。