義兄(あに)と悪魔と私
私達は、そのまま床の上で事を終えた。
私の隣には何故だか放心したような比呂くんが、裸のまま仰向けで転がっている。
こんなところ、とても親達には見せられないな、と私は漠然と考えた。
「……なんで?」
不意に、比呂くんが呟くように言った。
「そこまでして、なんで良子さんを庇おうとする? 普通、実の親でも愛想が尽きないか」
「……私も母も、やっと掴んだ幸せなの。だからかな……多分」
「多分?」
訝しげな比呂くんの声が聞こえた。
「本当は、よく分からない。でも直感で思った、この秘密は絶対守らなきゃって」
「馬鹿だよ……お前」
(私もそう思う……)
――こうして私は、義兄(あに)の奴隷になった。
怖くない、訳じゃない。
嫌じゃない、訳がない。
けれど、そうする他に道がなかった。
逃げ出すことはできない。
この先はきっと、もっと地獄だから。