義兄(あに)と悪魔と私
非理性的な感情
修学旅行の前夜。
荷造りを済ませ、明日の準備は万端だった。
もうやり残したことはないはずなのに、何故か目が冴えて眠れない。
麻実からラインのメッセージが届いたのは、ちょうどそんな時だった。
軽快なメロディに誘われるようにケータイを手に取る。
そして、それが目に飛び込んできた。
《あたし、明日有坂くんに告白する!》
意味はすぐに分かった。それでも私は、何度も何度も読み返す。
ここ数日で麻実と比呂くんは急接近していた……ように見える。以前は女子とはほとんど関わらなかった比呂くんが、麻実と談笑している姿を何度か目にした。
麻実によると、彼は実は気さくで楽しい人らしい。女子とあまり話さなくなったのは、告白を断り続けているうちに、何故か遠巻きに見られるようになったとか。
《そっか……ついにだね。頑張って!》
そんな、心にもない返事を返す。